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  • そもそもイップスとは何か(研究で報告されている症状)
  • 「アクセルとブレーキを同時に踏む」ような共収縮という現象
  • 私がパターのイップスになり、一度ゴルフをやめるまでの実話
  • 症状の裏にある「固定」という考え方と、脱力の本当の意味
  • 今日からできる、5つのセルフチェック

イップスとは?「メンタルが弱いから」で片づけていいのか

短いパットになると、急に手が動かなくなる。

普段なら何も考えずにできる動作なのに、構えた瞬間に「どうやって打っていたっけ」と分からなくなる。

練習グリーンでは打てるのに、試合では身体が固まる。打とうとすると手が急に動く。震える。インパクト直前で身体が止まる。

こうした状態は、一般に「イップス」と呼ばれています。

イップスは、単純に「パットが入らなくなった」「調子が悪くなった」という話ではありません。

それまで無意識にできていた特定の動作で、自分では普通に動かそうとしているのに、身体が思うように反応しなくなったり、意図しない動きが出たりする状態です。

1989年にゴルファーのイップスを調べた研究でも、jerk(急な不随意運動)、tremor(震え)、spasm(けいれん様の動き)などが症状として報告されています。

私自身も、パッティングのイップスを経験しました。

そして最終的には、「自分はイップスなのかもしれない」という状態と向き合いきれず、ゴルフから逃げるように一度競技をやめています。

だから私は、イップスを簡単に「メンタルが弱いから起こるもの」とは考えていません。

もちろん、緊張や不安が無関係だと言いたいわけでもありません。

研究でも、イップスには運動症状が強く現れるタイプと、パフォーマンス不安との関連が強く現れるタイプが示されており、一つの原因だけで説明できる現象ではないと考えられています。

では、実際に手が止まったり、勝手に動いたりするとき、身体では何が起きているのでしょうか。

「アクセルとブレーキを同時に踏む」ような共収縮

ここで一つ知ってほしい言葉があります。

「共収縮」です。

共収縮とは、関節を挟んで反対方向に働く筋肉が同時に活動することです。

例えば手首には、曲げる方向に働く筋肉と、伸ばす方向に働く筋肉があります。

共収縮そのものは異常ではありません。反対方向の筋肉を同時に働かせることで、関節を安定させることは、身体にとって必要な機能でもあります。

ただ、イップスのゴルファーを筋電図で調べた複数の研究では、一部のゴルファーで、パッティング中に前腕の反対方向に働く筋肉が同時に強く活動する「異常な共収縮」が報告されています。

特に、映像上でも不随意運動が確認されるタイプでは、こうした共収縮との関連が示されています。

「共収縮」と言われても、ゴルファーには少し分かりにくいと思います。

私は、車のアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態と考えると理解しやすいと思っています。

前に進みたいからアクセルを踏む。

ところが、同時にブレーキも踏んでいる。

身体でも「動かそう」とする側の筋肉だけではなく、その動きに対抗する側まで強く活動すれば、当然スムーズには動きにくくなります。

共収縮とは?アクセルとブレーキを同時に踏む状態を示した図
動かそうとする筋肉と、反対に働く筋肉が同時に強く働くことで、動きがスムーズにできなくなる。

本人は動かそうとしているのに固まる。

あるいは、拮抗していた力のバランスが一瞬崩れたときに、急な動きや震えとして表面に現れる。

イップス経験者の中には「手に電気が走ったような感覚」と表現する人もいます。

これは医学的に「電気が走る感覚=共収縮」と証明されているわけではありません。

ただ、自分の意思とは別に筋肉が急激に活動し、動かしたいのに思った通りに動かないという感覚を理解するうえで、共収縮という現象は一つの重要なヒントになると思います。

そして、ここで私は一つ疑問を持ちます。

なぜ身体は、アクセルだけではなく、ブレーキまで踏む必要があったのでしょうか。

この「なぜ力むのか」という問いが、私自身のイップスを考え直す出発点になりました。

「気にしない」「力を抜く」だけでは解決できない理由

イップスに悩んでいると、「気にしすぎだよ」「もっと楽に打てばいい」「結果を考えない方がいい」と言われることがあります。

私も、考え方を変えることやメンタルトレーニング自体を否定するつもりはありません。

緊張や不安が強く影響するタイプのイップスが存在することも、研究から示されています。

ただ、実際にイップスになった私からすると、「気にしない」「力を抜く」だけでは説明できないケースがあります。

なぜなら、力んでいること自体が根本原因とは限らないからです。

力みは、身体が何か別の問題を補った結果として出ている可能性があります。

私が言う「身体の問題」とは何か

ここでいう「身体の問題」は、単純に筋力が弱いとか、身体が硬いという意味だけではありません。

本来であれば身体の複数の場所で分担できる動作を、一部の関節や筋肉に頼ったり、別の場所で補ったりして成立させている状態も含みます。

例えば、ジャンプするとき。

本来であれば足首・膝・股関節などを使って身体全体で力を生み出せるはずなのに、股関節をうまく使えず、膝ばかりに頼って跳んでいる人もいます。

あるいは、何かを手で握ったり持ったりするとき。

本来その動作に必要な以上に肩まで上がり、首や肩を固めながら物を持つ人もいます。

身体の代償動作の例(ジャンプする動きと物を持つ動き)
代償動作は「動けない」わけではなく、本来の動きではない方法で成立させている状態。

どちらも「ジャンプできない」「物を持てない」わけではありません。

動作そのものは成立しています。

しかし、身体全体で分担できる仕事を、一部の関節や筋肉に頼って成立させています。

ゴルフも同じです。

身体の使い方にズレがあっても、ある程度は感覚で補えてしまいます。

「このくらい力を入れる」

「ここは動かさない」

「このタイミングで手を使う」

そうやって自分なりの感覚を作れば、ボールは打てます。

むしろ調子が良いときには、本人も身体の使い方に問題があるとは思いません。

だから厄介なのです。

本来の動作ではなく、「いつもの感覚」によってズレを補えるようになってしまうからです。

そこに緊張、プレッシャー、クラブの変化、身体の状態の変化などが加わり、「いつもの感じ」が少し崩れる。

すると突然、

「肩はどう動かしていた?」

「手はどのくらい使っていた?」

「テークバックってどう上げていた?」

と、それまで無意識だった動作を自分で操作し始めます。

私は、自分自身の経験から、メンタルはイップスのすべての根本原因というより、すでに存在していた問題を表面化させるトリガーになる場合があると考えています。

これは「すべてのイップスは身体が原因だ」という医学的な主張ではありません。

研究ではイップスを心理面と運動制御の両方を含む連続的な現象として捉える考え方も示されており、原因は一様ではありません。

ただ、少なくとも私自身については、「緊張したから突然イップスになった」だけでは説明できませんでした。

大事な場面でミスをしたからイップスになるのか

イップスについてよく聞くのが、「大事な場面で大きなミスをして、それがトラウマになった」という説明です。

もちろん、そうした経験が症状に影響する人はいると思います。

ただ、私はそれだけでは不十分だと考えています。

競技ゴルフをしていれば、大事な場面でミスをした経験のない選手など、ほとんどいません。

優勝争いで外す。予選通過がかかった場面でミスをする。人生を左右するように感じる一打を失敗する。

それでも、全員がイップスになるわけではありません。

見るべきなのは「プレッシャーがあったか」だけではなく、そのプレッシャーがかかった瞬間に身体で何が変化したのか。

私はそこまで考える必要があると思っています。

「上手い人しかイップスにならない」とも限らない

イップスは「上手い人がなるもの」と言われることもあります。

これも、私は少しニュアンスが違うと思っています。

競技志向のゴルファーほど、強い緊張にさらされる機会は増えます。

また、上達するほど「たまたまミスした」で片づけられなくなり、自分の動作と向き合う場面も増えていきます。

だから競技者ほど、イップスという問題を強く自覚しやすい部分はあると思います。

一方で、一般のアマチュアゴルファーをレッスンしていると、本人はイップスとは思っていなくても、似た構造を持つ人を見ます。

昨日まで打てていたアプローチが突然分からない。

トップが怖くなってインパクトで手を止める。

右に行くのが怖いから、直前で必ず手を返す。

「どう動くか」ではなく、「ミスを出さないためにどこを止めるか」が動作の中心になっている。

私は、「イップスか、イップスではないか」という名前だけで分けるより、この状態がどう作られているのかを見ることの方が重要だと思っています。

私がパターのイップスになり、ゴルフをやめるまで

ここからは、実際に私に何が起きたのかをお話しします。

現在の私はプロゴルファーとして競技をしています。

2024年のPGAプロテストに4位で合格し、PGA新人戦では準優勝、台湾ツアーにも参戦しました。

ただ、そこまで一直線に進んできたわけではありません。

私は一度、ゴルフをやめています。

大きな理由の一つが、パッティングのイップスでした。

始まりは、一本の重いパターだった

私の場合、症状が出始めた経緯には明確な心当たりがあります。

中学生の頃、大会で優勝した際の副賞としてパターをいただき、そのクラブを使い始めました。

それまで使っていたパターと比べて、かなりヘッドが重いものでした。

ここで誤解してほしくないのは、「重いパターだから悪かった」という話ではないことです。

重いヘッドには、それまで使っていたパターとは違う重さの感じ方がありました。

しかし当時の私は、その違いに身体の使い方を合わせるという発想がありませんでした。

それまでと同じ感覚で、自分からヘッドを動かそうとしていたのです。

もともと私は、パッティングで手を使いやすく、肩にも力が入りやすい傾向がありました。

そこに、自分にとってかなり重いヘッドが入った。

その重さに身体の使い方を合わせるのではなく、手・腕・肩を使って自分でヘッドを動かそうとしていた。

今振り返ると、それがもともとあった手打ちや肩の力みを、さらに強くしていったのではないかと考えています。

問題だったのは「パターが重かったこと」ではなく、その重さに対して私の身体の使い方が適応できていなかったことでした。

そして、その重いパターを使ったあとに以前のパターへ戻したとき、異変が起こりました。

パターヘッドの重みを感じられなくなっていたのです。

今まで普通に使っていたはずなのに、どうやって動かしていたのか分からない。

ヘッドがどこにあるのか分からない。

どうストロークを始めればいいのか分からない。

ここから、私の中で少しずつ「パターの打ち方が分からない」という状態が始まりました。

重いパターと身体の使い方の違い
問題は「重さ」そのものではなく、その重さに身体の使い方が適応できていなかったこと。

2日間で2メートル以内を15回外した

最初から「自分はイップスだ」と思っていたわけではありません。

最初は単純に、「自分はパターが少し苦手なんだ」と思っていました。

ショットは打てる。

ゴルフそのものができないわけではない。

なら、もっとパターを練習すればいい。

ところが、少しずつ状態は深刻になっていきました。

高校生のときに出場した世界ジュニアの予選会では、2日間で2メートル以内のパットを15回外しました。

これは今でも鮮明に覚えています。

幸い、そのときはショットがかなり良く、外したパットの多くがバーディーパットでした。

そのため、なんとか世界ジュニアへの切符を手に入れることができました。

その年には、高校生ながらミズノオープンにも出場しました。

高校生でミズノオープンに出場した当時の小木野太優
高校生のときに出場したミズノオープン。

外から見れば、順調に競技ゴルフを続けているように見えていたかもしれません。

でも自分の中では、パターを持つたびに「何かがおかしい」という感覚が大きくなっていました。

一番怖かったのは「自分の動作を信用できないこと」

イップスで一番苦しかったのは、パットが入らないことではありませんでした。

今まで当たり前にやっていた動作を、自分で信用できなくなることでした。

通常のミスなら、「少し右を向いていた」「フェースが開いた」と修正できます。

でもイップスになると、修正する基準そのものがなくなっていきます。

右に外したからフェースを閉じる。

今度は左に行く。

ストロークを変える。

握り方を変える。

テンポを変える。

それでも、自分の中に「ここへ戻ればいい」という場所がありません。

私は感覚に頼ってゴルフをしていたからこそ、その感覚が崩れたときに戻る場所がなかったのだと思います。

大学に入ってからは、試合で70台を切れなくなりました。

プロテストを受けても、まったく歯が立ちませんでした。

そして「自分はイップスなのかもしれない」という絶望感と向き合いきれなくなり、最終的にはゴルフから逃げるように競技をやめました。

パッティングのイップスと向き合う競技ゴルファー

私がイップスを振り返ってたどり着いた「固定」という考え方

その後ゴルフを再開し、身体や動作について学ぶようになってから、私は自分に起きていたことを改めて考えるようになりました。

ここから先は、研究で「すべてのイップスの原因」と証明されている話ではありません。

私自身の経験と、その後身体について学んできた中で持つようになった考えです。

その中で、私が特に重要だと考えているのが、「どこかを固定することで、動作を安定させようとすること」です。

ゴルフではよく、「手首を動かさない」「頭を動かさない」「下半身を動かさない」といった言葉を使います。

もちろん、固定すること自体がすべて悪いわけではありません。

重要なのは、なぜそこを固定しなければ動作が成立しないのかです。

本来使いたい場所がうまく働かない。

だから別の場所に力を入れて安定させる。

その結果、本来動く必要がある部分まで動きにくくなる。

動きにくいから、さらに力を入れて固定する。

不安定だから固める → 動きにくくなる → さらに固める。

私は、この循環がイップスのような症状を強くしていく一つの構造ではないかと考えています。

冒頭で「アクセルとブレーキを同時に踏む」という話をしました。

私が知りたいのは、「ブレーキを踏むな」ではありません。

なぜ身体は、ブレーキを踏まなければ安定できなくなっているのか。

そこです。

私の場合、答えの一つが肩と肩甲骨だった

では、私自身はなぜ手や肩に力を入れなければパターを扱えなかったのか。

身体について学びながら、クラブを持つ位置や力の入り方を一つずつ確認していくと、肩だけを緩めようとするよりも、クラブの重さを身体のどこで受けているかを変えた方が、肩や腕の力みそのものが変化することに気づきました。

そこから、私が特に注目するようになったのが肩と肩甲骨でした。

肩甲骨は、腕の動きを支える土台の一つです。

私は、肩甲骨周辺から背中側で腕やクラブからかかる負荷を十分に受けられていなかったことで、手・腕・肩を固めてクラブを支える必要があったのではないかと考えています。

つまり、私にとっては、

「肩に力が入っている → 肩の力を抜けばいい」

ではありませんでした。

肩に力が入っていたのには、理由があったのです。

肩甲骨周辺でクラブの重さを受ける感覚を確認する
クラブを身体の前に持ち、肩甲骨周辺で重さを受ける感覚を確認するドリル。

脱力とは「力をなくすこと」ではなく「受け皿を変えること」

この写真は、私が身体のどこでクラブの重さを受けているのか確認するときに使っている方法の一つです。

クラブを身体の前に持つと、その重さによって腕は下方向へ引っ張られます。

その重さを手や肩だけで支えようとすると、肩がすくんだり、腕や手に力が入りやすくなります。

そこで私が考えているのは、クラブの重さを肩だけで受けるのではなく、肩甲骨周辺から背中側まで使って受けることです。

ここで大切なのは、肩の力を無理やり消すことではありません。

肩に力を入れなくてもクラブを扱える状態を作ることです。

私はこれを、「力の受け皿を変える」と表現しています。

脱力とは、力をゼロにすることではありません。

必要以上に頑張っている場所から、本来その負荷を受けられる場所へ仕事を移していくこと。

これが、私自身のイップス経験を振り返りながら身体について学ぶ中で、たどり着いた考え方の一つです。

だから私は、イップスに悩む人を見ても、単純に「もっと肩の力を抜いて」とは言いません。

力みという結果ではなく、「なぜその力みが必要になっているのか」を見ます。

固定の悪循環(イップスの構造)を示した図
「不安定だから固める → 動きにくくなる → さらに固める」というループ。

同じイップスでも、原因は人それぞれ

ここまで肩と肩甲骨の話をしました。

ただし、ここで「肩甲骨を使えばイップスが改善する」と考えてほしくはありません。

それでは、「メンタルを強くすればいい」という答えが、「肩甲骨を使えばいい」に変わっただけだからです。

NearProで私が一貫して大切にしているのは、「同じミスでも、原因は人それぞれ」という考え方です。

同じようにパターで手が固まる二人がいたとしても、身体の中で起きていることまで同じとは限りません。

私がゴルフの動作を見るときには、例えば次のような要素を確認します。

  • つま先側に体重が偏りすぎていないか
  • アドレスや動作中に重心が大きくズレていないか
  • 巻き肩などによって腕や肩甲骨の位置が変わっていないか
  • 股関節を使いやすい姿勢になっているか
  • 呼吸を止め、必要以上に身体を固めていないか
  • その人固有の可動域や身体のクセを、別の動作で補っていないか

例えば、つま先側に体重が寄りすぎれば、身体は前方へ倒れないためにどこかでバランスを取ろうとします。

股関節を使いにくければ、本来そこで行いたい動きを膝や上半身で補う場合があります。

呼吸を止めれば、胸郭や腹部、肩周辺の緊張の仕方も変化します。

「肩が力んでいる」という同じ症状でも、その肩を力ませている理由は違う。

ここを見なければならないと思っています。

大切なのは、一つの原因を万能な答えにすることではありません。

その人が何を安定させるために、どこを固め、どこで代償しているのか。

だから私は、「イップスならこの練習をすればいい」という一つの答えには慎重です。

今日からできる、イップスの5つのセルフチェック

ここまで読んで、「では自分は何を確認すればいいのか」と思う人もいると思います。

ここではイップスを診断するためではなく、自分の身体で何が起きているのかを整理するための5つのチェックを紹介します。

1どこを「固定」しているか

短いパットを想定して構えてみてください。

「右に外したくない」など結果を見るのではなく、自分がどこを固めているかを確認します。

指なのか。手首なのか。前腕なのか。肩なのか。首なのか。下半身なのか。

無理に力を抜く必要はありません。

まず、自分がどこを固定することで安心しようとしているのかを知ること。

そこから始めます。

2クラブの重さをどこで感じているか

次に、ボールを打たずにクラブを身体の前で持ってみます。

クラブの重さをどこで感じているでしょうか。

指先だけなのか。前腕なのか。肩なのか。それとも身体のより広い範囲まで負荷がつながっているのか。

正解の感覚を作る必要はありません。

自分が普段、身体のどこでクラブを支えているのかを観察するためのチェックです。

3呼吸を変えると身体がどう変化するか

ミスを避けようとすると、知らないうちに息を止めていることがあります。

一度軽く息を吐いてから構えてみてください。

肩の高さは変わるか。腕の重さは変わるか。姿勢や足裏の圧は変わるか。

「息を吐けばイップスが改善する」という意味ではありません。

呼吸を変えたとき、自分の身体のどこが変化するのかを見ることが目的です。

4「正しい感覚」ではなく「再現できる条件」を探す

「今日はこの感覚なら打てた」という感覚ばかり追いかけないでください。

私は、それを繰り返して迷路に入りました。

立ち方を変えたらどうなるのか。足裏の圧を変えたらどうなるのか。呼吸を変えたらどうなるのか。クラブを支える場所を変えたらどうなるのか。

「この感じが正しい」ではなく、「この条件なら身体がこう動く」と整理する。

この違いは大きいと思っています。

5練習と本番で「身体の何が変わるか」

練習では打てるのに、本番では打てない。

そのとき「メンタルが弱くなった」で終わらせないでください。

グリップ圧が強くなっていないか。呼吸が浅くなっていないか。肩が上がっていないか。足裏の圧が変わっていないか。構える時間が長くなっていないか。

不安が出たときに、身体の何が変化したのか。

そこまで分かれば、「メンタル」という大きな言葉を、もっと具体的な問題に分解できます。

ゴルフのイップスを確認する5つのセルフチェック
原因を見つけるために、5つの視点で自分の状態を確認してみましょう。

イップスから私が学んだのは「感覚がなくても戻れる場所」を作ること

私はイップスになり、一度ゴルフをやめました。

だから、イップスに悩む人に「気にしなければ大丈夫」と簡単には言えません。

一本の短いパットでも、自分が何年も続けてきたゴルフそのものを信用できなくなることがあります。

でも、現在の私は「怖さを完全になくすこと」だけが答えでもないと思っています。

私が大切だと思っているのは、怖くなったとき、感覚がなくなったときに戻れる基準を作ることです。

自分はどう動きたいのか。

その動作にはどんな身体の機能が必要なのか。

本来の動きができない分を、別の場所で補っていないか。

どこかを必要以上に固定していないか。

そこまで整理できれば、「今日はいつもの感覚がないから打てない」という状態から少し離れることができます。

「力を抜け」と言われて無理に力を抜くのではなく、力まなくても成立する身体の使い方を探す。

私は、ここに大きな違いがあると思っています。

そしてこれは、すでにイップスだと自覚している人だけの話ではありません。

アプローチの打ち方が急に分からなくなった。

ドライバーで右が怖くなって、手を返すことをやめられない。

短いパットになると、身体を固めないと打てない。

そんなときに「自分はメンタルが弱い」で終わらせる前に、一度考えてみてください。

なぜ、その動きが必要になっているのか。

なぜ、そこを固めないと打てないのか。

私自身も、今振り返れば見るべきだったのは「自分はイップスなのか」という名前だけではありませんでした。

なぜ肩を固める必要があったのか。

なぜ手でパターを操作する必要があったのか。

なぜ以前の感覚を失っただけで、打ち方そのものが分からなくなったのか。

そこまで分解することで、ようやく自分に起きていたことを考えられるようになりました。

同じ「手が動かない」という症状でも、原因は人それぞれです。

だからこそ、症状に対して新しいテクニックを一つ足す前に、その症状や力みが、なぜ生まれているのかを見てほしいと思います。

NearProでは、現役プロゴルファーの私がLINEでゴルフの悩みを聞きながら、そのミスがなぜ起きているのかを一緒に整理しています。

「イップスなのか分からないけれど、最近打ち方が分からなくなっている」「何を試しても余計に分からなくなってきた」という相談でも構いません。

答えを一方的に渡すのではなく、今起きていることを一つずつ整理し、自分でも判断できる状態を作ることを大切にしています。

情報を増やすのではなく、迷いを減らす。

私自身が、戻る場所を失った経験があるからこそ、ゴルフに悩んだときに「何を基準に考えればいいのか」を一緒に探せる存在でありたいと思っています。

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参考文献

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  3. Smith AM, Adler CH, Crews D, et al. The 'yips' in golf: a continuum between a focal dystonia and choking. Sports Med. 2003;33(1):13-31.
  4. Adler CH, Crews D, Hentz JG, Smith AM, Caviness JN. Abnormal co-contraction in yips-affected but not unaffected golfers: evidence for focal dystonia. Neurology. 2005;64(10):1813-1814.
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